「つづき」後悔していること

「つづき」後悔していること


僕はその先に行かないといけない、そう思い通り過ぎようとしました。
でも近づけば近づくほど、僕の予測と現実が重なりあっていくのが嫌でもわかりました。
そして、真横に来てフードの中が嫌でも見えました。
推測と現実が一致した。僕はフードの中に見えた、元カノの顔をチラリと見て通り過ぎました。
そのとき
「この顔に見覚えあるよね?」
気づいたら僕は彼女の顔をしっかり見てしまっていた。いつもの別れ話のあとに見せる短い髪のあの子だった。
何も言えなかった。

そりゃだって、僕は彼女に酷い目に合わされたからだ。
自分はなんでも僕に愚痴ってくるのに、僕の愚痴には適当に流す。僕の慰めには耳を貸すのに世間話は「ふーん」の一言。
塾で疲れていたから寝ていた僕を何度も起こしてただ独りよがりの行為を求められたり。
だのにセックスはしてくれない。
挙句の果てには「他にも好きな人が出来たけど、同じくらい好きやからこれまで通りでいてね?」
それでもがまんしてみました。でも、余計悪化していく一方だった。
だから、僕は彼女と別れた。
しかし、逆にそれが僕にとって1番酷い目にあった出来事だ。
別れ際の泣きながら離れようとしなかった姿に僕は「どうせ俺の事を都合のいい男にしか思ってないんだろ?」って思ってしまった。
それは被害妄想でしかない。

今ならわかる。
彼女はメンヘラだったし、メチャクソ重い女ではあったけど、気遣いのできる女性だったからです。
僕が体調を崩していることを黙っていても直ぐに理解して、帰りはいつもしっかり目をつけていたり、僕が勉強中に寝てしまったら起こさないように筆記用具を片付けて、そっと毛布をかけてくれる。
他の人のことを好きになったといい、その人のことを追い回している時でさえ、そこだけは変わらなかった。

でも、そんなことは中学生の僕には理解出来なかったし、受験期のストレスや、これまで10人くらいの人と付き合っていた話が独り歩きして、被害妄想は日を重ねるごとに肥大化していた。
肥大化しすぎてもはや彼女という人物像がどうとか、今になっても分からないほどだ。

つづく

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